焦りと見栄からくるミスジャッジ

1年の振り返りの前にもう1つだけ、

自戒の念をこめて記しておきたい。

事業を推進する上で、

気をつけなくてはならないことの1つに、

『焦りと見栄からくるミスジャッジ』

があると考えている。

今、我々が身を置いているネット業界は、

スマートフォンの台頭とソーシャルプラットフォームの勃興に牽引され、

ECの堅調な伸び、広告手法のパラダイムシフトの加速も進み、

近年にない勢いを見せている。

(ずっと人材業界にいたので業界を語る立場にはないが、

9年前から、

顧客として数々の成長ネットベンチャーの経営者とお付き合いしてきたので、

その時の彼らの言葉を振り返っても、

この1年はものすごい勢いだったと思う。)

乱暴に言えば、

“一定の努力をした企業全員が儲かっている状態”

と言う状態。

ツイッターやFBでそれなりの数の経営者のつぶやきやポストを見ているが、

どの企業も、

この2011年は素晴らしい内容だったようだし、

(無論、ソーシャルメディアにネガティブなことをつぶやく人などいないが)

求人のマーケットを見ても、

ネット業界向けの求人(と看護/介護系)だけは不況などどこ吹く風状態で、

人材紹介会社に「紹介して欲しい」とお願いしても、

「いや~この領域は、引く手あまたですからね~。

候補者側が圧倒的に足りてないです。。。」

といわれる始末。

どの企業も増員増員で、

はっきり言って、いい話しか聞かないのだ。

こういう今だからこそ、

「焦ってミスジャッジをしてはいけない」


「見栄を張って、背伸びをしすぎてはいけない」

ということを強く意識している。

猫も杓子もとは言わないが、

どこに言っても「スマホ」「アプリ」「ゲーム」の話題ばかり。

ただ、現実は多くの会社がP/L上赤字で、

(戦略的な投資を含んだとしても)

外部からの資金調達によって投資をし続けているケースが多いと聞く。

VCが入り口のグロスも出口も足りていない状況が更に追い風となり、

相当なキャッシュが流れてきていることは明らかだろう。

そんな実態だったとしても、

周囲の会社や知り合いの経営者が中畑清ばりに絶好調だと聞くと、

経営者の性分として“焦り”が生まれるもの。

人間はそもそも相対的に物事を捉え、

人と自分を比較し、見栄を張り、

自尊心を保つために行動する割合が大きい生き物だと思うから、

「○○さんのところ2年目なのに月商○億いってるらしいよ」

「□□社長のところもう120人になって、今年更に採用強化しているらしいよ」

とかいい話ばかり聞いていると、

「負けていられない。」

「能力が無いと思われたくない。」

「自分でもできるのではないか。」

「少し余裕が出てきたし、うちもゲーム作ってみない?

はずれても、まぁ、大丈夫でしょ。」

という判断に陥りがちになる。

実際自分もそういう気持ちにならないかと言われれば、

たしかに意識しないといえば嘘になるし、

「そうか、う~ん、そうか・・・」と気にもなる。

ただ、そもそも事業の選択や規模の計画(スピード)は、

“最終的にどういった企業のありかたを目指すか”

によって決められるべきものであり、

企業の目標には例えば、

・一発ヒットアプリを作って大手に売って2・3億稼ぎたい

という経営者もいれば、

・アンドロイド向けアプリ開発企業としてアジアNo.1になろう

・3年で株式上場しよう!

・上場はしない。50人程度の社員をとにかく幸せにしたい

・手段としてアプリは創るけどもアプリ会社ではなく総合ネット企業になる

・100年続く企業グループを創ろう。

・仲間とワイワイ楽しくずっとやっていきたい。

などなど様々あるものだし、

それらが違う人たちと比較し、

勝手に競争し、焦ってもしょうがないとも思う。

こんなことを書くと、

「みな、それぞれに経営目標があり、

逆算で意思決定し、

その企業ごとに最適な手段を選択しているからそれで良いのでは?」

とご意見を頂く気もするが、

一方で決して少なくない数の企業が倒産し、

解散し、ある時を境に大幅に縮小をしているのを見てきた者としては、

あくまで自戒として、

そういったミスジャッジをしてはならないと常日頃から意識している。

名著と言われた『ビジョナリーカンパニー3』の、

衰退の5段階

・第一段階:成功から生まれる傲慢

・第二段階:規律なき拡大路線

・第三段階:リスクと問題の否認

・第四段階:一発逆転の追求

・第五段階:屈服と凡庸のあ企業への転落か消滅

ではないが、

すでにそういうミスジャッジをしていないかと、

点検するようにしている。

もちろん経営だから“勝負どころ”はある。

そこをはずすと跳ねるものも跳ねないのも事実。

結局は、

『事業センス』

ということになるのだろうが、

まだまだ力の無い企業として、

①収益を決定付けるKPIの観察を怠らず、

気になる動きを見せた瞬間に都度リスクヘッジに走る。


②新しいサービスへの投資は、

基本的に本業から生み出されたフリーキャッシュで勝負する。


③経営目標を3つ(A/B/C)用意し、

必要以上の成長を求めすぎない。


④決めた月次粗利益/営業利益を継続的に確保できるまでは、

を短期的に収益貢献をしない新規事業には取り組まない。

の4点を常に意識している。

ベンチャー企業と呼ぶにはイマイチな内容と捉えられる方もいるだろうが、

本音を書けばこんな感じである。

我々が目指す企業像は、

あくまで長期目線。

王道と言われる企業創りを追求し、

正しく勝ち残れる組織を創りたい。

まずは今の提供サービスの価値を、

いつまでにどこまで引き上げるかを決め、

ブラさずにそこにたどり着く。

その間たくさん儲かり話が舞い込んでくるだろうけど、

焦らず、我々らしく頑張ろうと思う。

改めて自戒の念をこめて。

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